N.SEMINAR「ピンチをチャンスに変える、これからの地方との向き合い方」藤沢久美

地域を元気にするために

1996年に日本初の投資信託評価会社を起業し、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画、現在は代表として活躍する藤沢久美氏。社会の課題解決のための技術革新や、新しいビジネスモデルの創出をめざす様々な事業に取り組むほか、国内外の多くのリーダーとの交流や対談をこなし、様々なメディアや講演を通して、リーダーのあり方や社会の課題を考えるヒントも発信しています。

奈良で生まれ、22年間を奈良の地で過ごした藤沢氏にとって、「奈良は子供時代から歳を重ねても、ずっと特別な繋がりがある場所」と話します。今回の記事では、そのような奈良を地域の事例として「ピンチをチャンスに変える、これからの地方との向き合い方」をテーマに、地域とどのようなステップで向き合えば良いのか、そのプロセスを藤沢氏にお話しいただきます。(この記事は1月23日に開催されたN.SEMINARの講演内容の一部を参考に、主催の奈良クラブのご協力のもと、奈良新聞社が記事化したものです)

藤沢久美(ふじさわくみ)
国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。99年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。現在、代表。2007年には、ダボス会議を主宰する世界経済フォーラムより「ヤング・グローバル・リーダー」に選出され、2008年には、世界の課題を議論する「グローバル・アジェンダ・カウンシル」のメンバーにも選出される。2016年には、文部科学省を中心とした政府主催の官民プロジェクトの国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」の準備室リーダーとして、のべ7500人が集う会議を成功に導いた。また、政府各省の審議委員、日本証券業協会やJリーグ等の公益理事といった公職に加え、静岡銀行や豊田通商など上場企業の社外取締役なども兼務。近著は、『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社 2016年)。2020年3月早稲田大学大学院スポーツ科学研究科を首席で修了。

 

地域と関わるための3つのステップ

藤沢氏は地域企業が抱える経営課題の解決や、多くの地域プロジェクトを手掛けています。はじめに、そのようなプロジェクトで藤沢氏が地域と向き合うときに心がけている3つのステップについてご紹介します。

藤沢氏の地域と向き合うための3つのステップ

■ステップ1「歴史を知る」

地域・企業・人々の歴史を徹底的に読む、聞く、調べるステップです。

地域の誕生や紡いできた歴史、その地域が日本や世界に対して、どのような役割を担っていたのかなどを徹底的に調べること。長く地域にいる人は、自分たちの歴史を考えなくなってしまうことが多く、実はすごく価値のある歴史を置き去りにして、今のことや新しいことばかり考えてしまう傾向にあると藤沢氏は指摘します。

この徹底的に調べることが、地域で何かをするときに重要なことです。

ぜひ自分の地域の歴史について、徹底的に調べてみましょう。

 

■ステップ2「今を知る」

徹底的に歴史を調べ学んだ次に、「今はどうなのか?」と考え、今と昔をつなぐための行動に移すステップです。

自分の地域の昔と今を比べ、今に置き換えてみるなど、今にどのような価値があるのかなどを探っていきます。

 

■ステップ3「柱を選ぶ」

1・2のステップで見えてきたものをどのように繋げ、具体的に行動していくためには、何を中心とした柱にするのかを選ぶステップです。

あなたのやりたいと想うことを、どのようにしたら多くの人へ伝わるのか、協力を得られるのか、具体的な行動をより円滑に移すために必ず必要になるステップです。

次に、この3つのステップを藤沢氏の事例とともに、詳しくご紹介していきます。

 

ステップ1「歴史を知る」

調べるということは、地域の歴史を知り、生い立ちを知ることが重要です。どのような地域にも必ず歴史があり、そこに面白さがあります。それを探すことは「宝探しに似ている」と藤沢氏は話します。

全国で有名な企業が生まれるときに実は地域が関わっていたり、日本で初めて何かが行われた地域だったり、現代では別のものと思われがちでも、実は原点は一緒だったり。

まずは地域の何らかの面白さを掘り出してみましょう。

その上で藤沢氏は「地域のアイデンティティとはなんだろう?」と仮説を立てることが良いと話します。

地域の歴史を学び、聞き、現在の価値を重ね合わせるなどで、その仮説をベースに様々な取り組みへ繋げていくことができます。もちろん仮説のため正解はありませんが、調べた人が仮説を立てるということが重要です。ぜひ実践してみてください。

概念ではなく、具体的な事例として「奈良」で考えてみましょう。

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