なんちゃって「パーパス経営」では意味がない!社会を良くする“共闘”イノベーション

こんにちは、IDEAFUL(@ideafuls)こと、世瀬健二郎です。
「社会を良くするイノベーション」もこれで4回目となりました。

最近「パーパス経営」「パーパス・ドリブン」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。「組織が掲げる社会的意義を起点に、経営やブランディングを行うこと」というのがその意味です。つまり「どうやったらもっとモノが売れるだろうか?」という視点だけではなく、「どうやったら社会をより良くできるだろうか?」を一緒に考えてみようということ。

例えば、化粧品メーカーを例に挙げてみます。
「パッケージを植物由来のものに変えるイノベーションを行おう」
「リサイクルを率先して行えるようにお店に回収ボックスを設置しよう」
要するに、こういったアクションを化粧品を売る以外にもちゃんと考えていこう、ということです。

社会を語る上で企業の影響力は絶大ですから、パーパス・ドリブンな思考を企業が持ち合わせることにはとても意義があります。しかし、ほとんどの企業はモノを売ってなんぼの組織体ですから、誤解を恐れず言うと企業の良いイメージを世間にPRする為に、パフォーマンスでいわば片手間で行われているイノベーション(なんちゃってパーパス経営)も数多く存在しているように思います。

そもそも二酸化炭素の量を減らしてカーボンニュートラルを達成したところで、売り上げがすぐに上がるわけでもありません。企業が明日も食いつなぐにはちゃんと物を売らないといけないわけで、綺麗事だけではいずれ立ち行かなくなります。このように、なかなか見返りが見えにくい社会を良くするというアクションに長期的かつ多くを投資するのは、一部の潤沢な資金のある企業を除いて難しいのが現実です。

では、どうすればいいのか?
とあるヒントを「ハーバード・ビジネス・レビュー」の中で見つけました。

記事によると、

共闘(Co-opetition)が今後の企業活動を語る上で一つの鍵

になるそうです。Co-opetitionとは、たとえ競合関係にある企業や組織体であっても、知見や資産を共有しオープンにすることで、互いにベネフィットをスケールさせていこうという共同繁栄の考え方です。
出典:Harvard Business Review

少し前の話になりますが、1997年に業界内外に衝撃を与えたアップルとマイクロソフトの協業はわかりやすいケースでしょう。今まで競合関係にあった二社が手を組み、マックのOSの中でもマイクロソフトのWordやExcelといったアプリケーションを活用できるようになりました。その結果、パイを食い合うどころか、私たちの今日のデジタルライフの基盤ができたことは言うまでもありません。当時のアップルCEOのスティーブ・ジョブズ氏も「アップルが勝ち、マイクロソフトが負けるべきだという考え方は捨てるべきだ」と発言しています。

最近では、かのテスラもオープンソースフィロソフィー(知見共有の哲学)を掲げ、「誠実にテスラの技術を利用する人や組織を、権利侵害で訴えることはしない」と宣言し、共闘イノベーションの動きを加速させています。
出典:WORLD ECONOMIC FORUM

この考えは、パーパス経営においても同様なのではないかと思っています。そもそも社会を良くすることに、競合関係にあたる人も会社もありません。誰もが美しい社会を作り上げるための責任の一端を担うべきですし、共通のゴールに向かって手を取り合うのはごくごく自然なことではないでしょうか?

企業や組織のパーパス・ドリブンなアクションを加速させ、スケールさせ、社会に大きなインパクトを与える‟共闘イノベーション”。世界ではいろいろな協業が既に始まっているようです。

ペプシにも使用が許可されている、
コカ・コーラ独自の植物由来のペットボトル

出典:Coca-Cola Europa

2009年に発表されたコカ・コーラによる、植物由来のPlantBottle。業界に先駆けてプラスチック削減に取り組むことで、他社との競合優位性を獲得する大切な資産になっていました。当初からケチャップのハインツなど、同社と競合しない会社には技術提供されていましたが、約10年後の2018年に、競合を含む全ての会社が使用できるようになりました。その理由は、活動をスケールアップするため。「美しい地球を守る」という人類共有の目的を、競合関係を超えて共に実現しようと呼びかけています。

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