クリエイティブインタビュー|神戸新聞社
2017年5月17日、神戸新聞読者のもとに届けられた新聞には、一つの紙面特集が折り込まれました。
新聞紙面の見開きを使い、防災グッズの実物大画像がレイアウトされた広告紙面「避難所もっとより良く非常袋 #並べる防災」にラッピングされた特集です。
この広告紙面は、避難時に持っていると役立つ物資がわかるほか、実物を並べることで非常袋の準備と防災意識も高められるとして評価され、2018年グッドデザイン賞、ADFESTグランプリなど国内外の多くの賞を受賞しました。
今回、2017年当時に紙面の企画・制作に関わった神戸新聞社の大野翼さん、株式会社電通デジタルの秋元健さん(2017年時は株式会社電通コミュニケーションデザインセンターに所属)に詳しくお話しいただきました
震災の記憶を次の世代へ
―特集紙面は全広連大会の「第65回神戸大会」に向けた企画がきっかけとのことですが、なぜ避難所をテーマにされたのでしょうか?
大野さん:
このような特集では震災をテーマにすることが多いのですが、紙面を発行した2017年当時、1995年に発生した阪神・淡路大震災から20年以上が経過しており、震災の記憶が薄れた人々や、震災を知らない世代も増えていました。
私たちはどのようにして震災の記憶を受け継いでいけるのかを考えたとき、実際に災害が起きてしまったときの「備え」を大事にしたいと考えました。
そして神戸新聞社では、地域と連携して災害時の避難訓練を広げることや、訓練の地域格差をなくすことなどを進めていました。避難所の開設は、原則として市役所と学校が協議のうえ開設します。しかし実際は、市職員がすぐに到着できない場合が多く、開設や初期の運営は、地域の防災福祉コミュニティの方々に委ねられることになり、住民自身で考えて命を守らなくてはいけないことがわかりました。
阪神・淡路大震災で亡くなった6434人のうち震災関連死が919人でした。もともと持病のある75歳以上の高齢者の場合、なれない避難所のストレスが原因で症状が悪化してしまったり、新潟県中越地震では避難所を使わずに車中泊を続けたことで、エコノミークラス症候群を発症してしまったりなども問題となっていました。
このように「備え」はとても重要なテーマだと考え「避難所」へ行き着き、災害発生時に避難所開設まで地域の人たちはどうすべきか、そして避難所について考えてもらえる「避難所もっとより良くプロジェクト」として、紙面にしようとなりました。
避難所をもっと身近に
―避難所をテーマにした特集が決まり、その特集のラッピング広告として「避難所もっとより良く非常袋」が制作されました。こちらの紙面企画・制作は株式会社電通ですが、どのような経緯で依頼されたのでしょうか?
大野さん:
避難所プロジェクトは「117KOBEぼうさい委員会」に所属する大学生が中心になって取り組みました。この「117KOBEぼうさい委員会」は、2014年に電通さんと一緒に作り上げた組織であったこともあり、今回の広告紙面の企画もお願いしました。
秋元さん:
神戸新聞社さんのパートナーとして、個々の企画ではなく一連の活動をサポートするチームが電通にあり、長期間にわたり神戸新聞社さんと並走して様々な取り組みをしていました。今回の紙面企画は、そのチームメンバーからクリエイティブ制作の依頼を受けたかたちです。
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