ハゲがかっこいい! 薄毛男性のためのメディア「NOHAIRS」
「美人になろう」
「イケメンになろう」
「痩せよう」
「無駄毛を剃ろう」
ビューティの世界では、長い間「決められた美の基準に、自分を近づけよう」というメッセージが発信し続けられてきた。
しかし、時代は変わりつつある。
とある海外の化粧品ブランドは、サイボーグのようにメイクされた美女モデルの広告起用を中止した。代わりに起用されたのは、クラスやオフィスに普通にいそうな、ナチュラルなルックのモデル達だった。
プラスサイズモデルと言われる、平均以上の身長や体重のモデルたちが活躍するようになった。
誰かが勝手に決めた「美の基準」を拒否し、多様性を祝福する。そんなムーブメントが、世界中で起きているのだ。
もちろん、日本も例外ではない。「NOHAIRS」というサイトをご存じだろうか。コンセプトは「イケてる薄毛のためのスタイルメディア」。活躍する薄毛男性へのインタビューや、薄毛男性用のための着こなしノウハウといった記事が紹介されている。読んでいると、薄毛男性ではなくても、勇気が湧いてくるからおもしろい。
よく考えてみれば、心身ともにコンプレックスが全くない、という人は少数派だろう。「ありのままのを受け入れて、自信を持って生きよう」というNOHAIRSのポジティブなメッセージは、誰もが共感できるのだ。
今回、このNOHAIRSを主催している人物に話を聞くことができた。薄毛の男性を想像されたかもしれないが、なんと20代の女性だ。この事実も、現代を象徴しているように思う。男だから、女だから…なんていうバイアスにとらわれない、多様性の時代が、もうそこまで来ているのだ。
「橋口幸生のイノベーター・インタビュー」第1回、高山芽衣さんのインタビューをお届けする。
カッコいいのは、容姿にめぐまれた人ではなく、堂々とした人。
橋口幸生:高山さんの会社パッション・モンスターは「多様性があたりまえな世の中へ」というミッションを掲げられています。背景には高校時代の経験があるそうですね。
高山芽衣:そうなんです。私が入学した高校は、もともとは自由な校風だったんです。私服もOKでした。それなのに、偏差値が下がったことがきっかけで「髪色は黒」と校則が厳しくなったんです。「偏差値と髪の毛の色って関係なくない?」という疑問を感じましたんですよね。また、先生とのつきあいが上手な子は、茶髪なのに良い内申点をもらっていたりする。そういうことにも違和感がありました。
橋口:今でこそ「ブラック校則」なんていう言葉ができて、理不尽な校則は止めようという機運が高まっています。地毛証明書の提出を求めたり、下着の色を指定したり。
高山:キモいですよね(苦笑)
橋口:しかし、高山さんが高校生の時、当事者としてその問題に気づけたのは凄いですね。あたりまえを疑うというのは、とても難しいことです。大人でも誰でもできるわけではない。
高山:そこは、父の影響が大きいと思います。父は市役所勤務なのですが、趣味のために割り切って仕事をしているところがありました。今は退職して、夫婦でやりたいことをやって、人生を楽しんでいます。自由な生き方をしているんです。
橋口:堅い職業の代表に思われている公務員のお父さんが、自由な発想の原点というのも、おもしろいですね。公務員=堅いという「あたりまえ」に縛られていた自分に気がつきました。高山さんの視点は、海外経験のある人に通じるものがと思います。海外に滞在すると、日本社会を相対化して見るようになるから、あたりまえとされているけど、実はおかしいことに気づくようになる。
高山:長期の滞在経験は無いんですけど、海外旅行は好きです。これまで十五カ国くらい出かけてます。
橋口:最初に就職されたのは、外資系アパレルの販売員だったそうですね。
高山:はい。ある時、ものすごく派手な服が入荷されていたんです。私は「こんな派手な服、どうやって着るんだろう?」と思っていました。ところが、その服を着て渋谷のスクランブル交差点を堂々を歩いてる女性を見かけて、すごくカッコよかったんですね。カッコよさというのは、内面の自信から来るものなんだと気づいた出来事でした。堂々としている人はカッコいいですよね。
橋口:そうですね。持って生まれた容姿が優れている人は確かにいるけど、そこは本質ではない。薄毛でも何でも、堂々している人はカッコいい。そこからNOHAIRSの活動につながったのでしょうか。
高山:そうですね。
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