聖域なしの本音インタビュー!『サンクチュアリ 』脚本家 金沢知樹さんに聞く!

Netflixなどの動画配信サービスが普及し、世界中のドラマが普通に見れるようになった。その結果、多くの人が感じたのが、日本と海外の圧倒的な差だろう。『ストレンジャー・シングス』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ナルコス』など、映画顔負けのクオリティの海外ドラマを見てしまうと、どうしても日本ドラマには物足りなさを感じてしまう。タレント主導なので企画が弱いことが多いし、予算の限界から絵的なリッチさも少ない。このまま日本ドラマは日本国内でガラパゴス的に消費されるのだろうな…という諦めムードが、漂っているように思う。

そんな中、登場した革命的な作品が、『サンクチュアリ -聖域-』だ。

肉体改造を行った役者たちは、本物の力士にしか見えない。ハイスピードで撮影された取り組みは、骨のきしみと肉の痛みがリアルに伝わってくる。八百長、かわいがり、カルト宗教とのつながりなど、角界の闇を容赦なく描くストーリーには、一切の手加減がない。

「日本のドラマにしては…」という枕詞を必要としない、本当に凄い作品が、ついに誕生したのだ。

今回は『サンクチュアリ -聖域-』の生みの親である脚本家、金沢知樹さんのインタビューをお届けする。自身のバックグラウンドから他の作品からの影響、他では絶対に読めない裏話まで、『サンクチュアリ -聖域-』同様のディープ過ぎる内容になっている。

芸人を志して上京、脚本家に。

金沢:もともと僕は、芸人になろうと思って東京に出てきたんです。とんねるずのファンで、彼らのラジオをよく聞いていましたね。番組を投稿する「はがき職人」でもありました。今でもその頃やっていたことが、自分の原点だと思ってます。インディーズということですよね。

橋口:当時のとんねるずは、お笑いを超えた、とがったカルチャーの象徴のような存在感がありましたね。

金沢:それで、1997年1月に故郷の長崎を出て上京したんです。ただ、芸人としてはダメでしたね…うまく行きませんでした。芸人時代、いちばん顔が売れたのは、恋愛バラエティの『あいのり』(フジテレビ)に出演したことでした。ただ、この時、番組は僕を「芸人」ではなく「ホテルマン」として紹介したんですよ!ホテルでバイトをしていたから、という理由で。
橋口:リアリティショーなので一般人っぽい肩書にしたかったのでしょうけど…失礼な話ですよね。

金沢:ホントですよ!それで、「ホテルマン」として有名になってしまったのが致命的でした。芸人として舞台に立っても、「『あいのり』で有名になったから、調子に乗って芸人を目指してるんだ」と見られるようになってしまったんです。

橋口:もともと芸人なのに。

金沢:それで、もう芸人は辞めることにしたんです。芸人じゃなく、カレー屋さんになろうと。

橋口:カレー屋?

金沢:そうです。カレーの腕前には自信があるんですよ(笑)。「ちゃん金カレー」という屋号も決めていました。でもその矢先、ネプチューンの堀内健さんから『笑う犬』(フジテレビ)の放送作家にならないかと誘われたんです。同じタイミングで、『ネプリーグ』(フジテレビ)などの構成作家の小野寺さんから、和田アキ子さんのラジオ番組の構成作家の仕事もオファーされました。2人とも尊敬する先輩だったので、芸人から放送作家に転身したんです。でも、放送作家時代の収入は月7万円だったんですよ。

橋口:とても食べていけないですね…

金沢:でも、食べるためだけのバイトはしない、と決めていました。ライターの仕事だけをしていましたね。風俗誌のライターをしていたこともありますよ。

橋口:「小生、大1枚を握りしめ…」みたいな。

金沢:あの世界ですね(笑)。そんな感じで放送作家になったものの、何とか食いつないでいるという感じで、上手く行かない。すると、地元・長崎のことを思い出すんですよ。でも、帰れないですよね。友達の結婚式に呼ばれても「◯◯さんとの仕事があって」とか、全く会ったこともない有名人の名前を出して嘘をついて(笑)断ってました。そこで、“もし長崎に帰ったらどういう人生を送るんだろう”という文章をmixiに書いたんですよ。それが『サバカン SABAKAN』の原型ですね。

「すべてのキャラクターにモデルがいます」

橋口:『サバカン SABAKAN』は、金沢さんの子ども時代がモチーフになっていると聞いています。

金沢:そうですね。映画に出てくるブーメラン島も実際にあります。作中ではイルカを見に行く話になっているけど、実際はイルカが死んで打ち上げられたという噂を聞いてブーメラン島に行ったんです。実際の経験をもとにアレンジしていますよね。

橋口:僕が『サバカン SABAKAN』が素晴らしいと思うのは、長崎の美しい自然や少年時代の冒険など、日本の原風景のようなノスタルジーと並列に、貧困や差別も描かれていることです。同情するでも、批判するでもなく、「ただ、そこにあるもの」としてフラットに描いている。これは他の映画では、意外と無いことだと思います。

金沢:それは僕自身、家が貧乏だったからですよね。毎日電話がずっと鳴ってるんです、借金取りの。父ちゃんが建築会社をやってたんですけど、借金がすごかったんです。今でも電話が嫌いですよ。電話が鳴るのは、嫌な知らせのイメージしかないんです。チャリ(自転車)にしても、お下がりのお下がりのお下がりみたいなチャリ、もう本当に川の底に沈んでいたようなチャリ乗っていましたから。

橋口:自転車は、『サバカン SABAKAN』でも重要なモチーフとして登場します。

金沢:そんなチャリも、売られちゃったんですよ。ある家に帰ったら、目の前を車が通り過ぎて、俺のチャリが荷台に乗せられていたんです。あんなボロッボロのチャリを売っちゃうくらい貧乏なの?とショックでした。その後、父ちゃんは女と逃げてしまったので、母ちゃんは朝から晩まで働いていました。夜中、ふと目を覚ますと、母ちゃんが泣いてるんです。泣きながら、部屋の壁に1,000円札を逆さまに貼ってるんです。

橋口:なんですか、それ?

金沢:お金が貯まるおまじないらしいんですよね。そういうのを見て、僕も何かしなくちゃと思って、ヤクルトの配達をはじめました。

橋口:子どもだった金沢さんが…

金沢:小学生3、4年くらいからかな。3年間くらい続けましたね。他の子は放課後、サッカーとかして遊んでるんですけど、僕は帰ってヤクルトを配るんですよ、町内を。それって、やっぱり恥ずかしいんですよ。帽子をこう深めにかぶって隠してましたね。1ヶ月毎日配達して、もらえるのは3,000円くらいかな。その3,000円を母ちゃんに渡したら、「ありがとうね」って言って、封筒をギューッと握りしめるんです。「あ、こんな貧乏なん、俺」って思いましたね。

橋口:3,000円がそんなに大金という。

金沢:3,000円ですよ。ラーメン全部のせでそれくらいいくでしょう、今。

橋口:ちょっと高級なお店なら、2〜3,000円しますよね。

金沢:ミッドタウンのラーメン屋だったら、それくらいですよね(笑)。僕の根底には、そういうのがあるんです。『サバカン SABAKAN』を見て、「こんな貧乏人いるのかよ」って言う人もいるけど、いるんです。実際に。いるから堂々と書けるんです。

でも凄いのが、後に芸人になると、俺ん家なんてまだ幸せだった、ということが分かるんです。俺の知り合いの芸人なんて沖縄で生まれて、家がなくて、テトラポットあるでしょう?あの中に住んでたんです。凄まじくないですか?テトラポットですよ。

橋口:テトラポット、住めるんですね・・・。

金沢:サンゴを取って削って食べていたそうです。当時、周りに貧乏なやつが多かったんですよ。同じような境遇のやつもいたし。だから、「俺は不幸だ」とも思わなかったですけどね。だから、たぶん貧乏も自分の中では普通、というのはあります。

橋口:『サバカン SABAKAN』の主人公のひとり「タケちゃん」は、貧しい家の子どもでした。

金沢:タケちゃんの家は、僕の友だちが実際に住んでいたんですよ。

橋口:えっ?!

金沢:もう友だちと家族は出ていたんですけど、家は残っていたんですよ。もう本当にボロボロで、古くて、長屋で、衝撃だったんです。そこで、その家を改造して、映画に使いました。『キン肉マン』って顔の形をしている、ボロボロの家に住んでいたでしょう?

橋口:ありましたね。(笑)

金沢:美術に頼んで、『キン肉マン』の家に似せてもらったんです。だからリアリティがあるんですよ。貧乏すぎるけど、コミカルなんですよね。

橋口:劇中ではサバの缶詰でお寿司を作りますが、あれも実際のエピソードですか?

金沢:厳密には違うけど、似たようなことをしてましたよ。みんな金がないのでトマトや卵を農家から取ってきちゃったり。『はだしのゲン』の世界ですよ。

橋口:『はだしのゲン』や『火垂るの墓』の世界ですね(笑)。

金沢:『サバカン SABAKAN』のラストシーンで、女の子が海から上がってきて、夕日になっていくというシーンがあるんです。その海に、めっちゃペットボトルとかいっぱい落ちてるんですよ。スタッフの人がそれを片付けようとしてたんですけど、止めたんです。「それ、そのままにしといてください。海は汚いから。こんなんいっぱい浮かんでるし、全然いい。きれいな絵を撮りたいわけじゃない」って言って。山を撮影したときも、途中でポリバケツのグッチャグチャになったものが投棄されてたんですけど、それもそのまま映ってます。とにかく嫌なんですよね、加工するのが。だからアイドルとか役者とかが好きじゃないのかもしれない。加工されまくってるものじゃないですか。

橋口:まぁ、現実逃避するためのものだったりしますからねぇ。

金沢:ただでさえ物語なんてウソっぱちなのに、さらにキレイにしてウソを重ねてどうするんだ!?と俺は思うんですよね。だから『サバカン』も『ガチ星』も『サンクチュアリ』も、登場人物は全員モデルがいるんです。僕の周りの友達だったり、先輩だったり、自分自身だったり。ちゃんとモデルがいたら、そいつらがしゃべっていることになるから、ウソをつけるんですよね。物語というウソを。そこはいつも大事にしてますね。

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