こんにちは、IDEAFULの中の人こと世瀬健二郎です。上海の某広告会社でシニアクリエイティブディレクターを務めています。連載「社会を良くするイノベーション」も3回目になりました。今回は日常に潜むニーズから生まれた、“普段着”のイノベーションの数々に目を向けてみたいと思います。
もちろんここで言う「普段着」は日常的な物であることの例えですが、実際に普段着を例に出してみると分かりやすいかもしれません。例えば日々何気なく着ている制服。その多くは「こうあるべき」という社会常識の前提に則っているものが多いのではないでしょうか。その最たる例が学校の制服でしょう。少なくとも日本では、男子はスラックス、女子はスカートというスタイルがまだまだ一般的です。でもそれって誰がそう決めたんでしょうか? そもそも「普通」って一体何でしょうか? 多くの人が選ぶこと、見て違和感がないことを普通と呼ぶのかもしれませんが、それとは異なる「普通ではない」スタイルを提案することで、着る人がより快適に自由に過ごせるならば、きっとそこにはイノベーションの余地があるはず。ふと見返してみると、僕たちの生きる日常には、イノベーションの種になるような小さな課題や矛盾が実に多く転がっていることに気づきます。そしてそんな日常におけるイノベーションこそ、社会を変える大きな力があると思うのです。
今回僕が着目したのは、文字通り“普段着”のイノベーション。学生、キャビンアテンダント、ヘルスケアワーカー…彼らには共通して“制服”という名の普段着があります。いずれも暗黙のうちに思考停止し、そのスタイルを長らく守り続けられてきました。しかし、世界にはそんな普段着から社会を変えたイノベーションが数多く存在します。「こんなもんでしょ」「ルールだから仕方ない」そんな思考停止こそがイノベーションの大敵です。イノベーションはいつも見えないニーズを顕在化し、常識を疑うところから始まるからです。今回も世界の優れたケースを通じて、読者の皆さんの思考をほぐしてもらえたら嬉しいです。
Project Uni-form / Vogue / Ogilvy Taiwan
UNI-FORM
出典:D&AD
誰もが経験したことのある普段着といえば「学生服」が挙げられます。台湾のVogue社は男女で決まった制服を着るステレオタイプのジェンダー意識を改革するために、地元のファッションデザイナーAngus Chiang氏とタッグを組み、公立高校の為に特別なジェンダーレス制服を11種類デザインしました。その様子は多くのメディアにも取り上げられ、たちまち話題化。性別に規定されない画期的な制服は、学生のみならず大人たちも巻き込み、台湾のジェンダー意識を大きくアップデートすることに繋がったそうです。
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