行動を変えて社会を変える、“アクティベーション型”の草の根イノベーション

こんにちは、IDEAFUL(@ideafuls)こと、世瀬健二郎です。
「社会を良くするイノベーション」5回目の今回は、一人ひとりの行動を変えることで社会を変える、草の根的イノベーションの数々をご紹介したいと思います。

そもそも「イノベーション」と一括りで言っても、タイプは様々だと思います。例えば、イノベーションという言葉と最も親和性が高いのは、「テクノロジー型」でしょう。これは何かしらの新しい技術によってもたらされるイノベーションを指し、例えばクルマのカーナビや自動運転、iPhoneの登場など、人々が想像もしていなかったテクノロジーの発展によってもたらされるイノベーションがそれに分類されます。

「インフラ型」というのもあると思います。これは上記のように最新のテクノロジーを必ずしも伴うものとは限りません。例えば、街のゴミのポイ捨て問題を解決するために「街中にゴミ箱を設置する」というのがこれに当たります。たとえ目新しいソリューションではなくても、スケールさせることで社会を大きく変えるイノベーションになる、インフラに変革をもたらすものがこれに分類されます。

そして今回ご紹介するのが、「アクティベーション型」です。僕のような広告業界で働く人なら一度は聞いたことがあると思います。文字通り、人の行動を喚起するソリューションのことを指します。「トイレの後に手洗いを無性にしたくなるアイデア」とか、「歩きスマホをやめたくなるアイデア」などなど。テクノロジー型やインフラ型に比べると一見地味で草の根的かもしれませんが、人の行動を変えることで社会を良くする、いわばイノベーションのプロトタイプとも言えます。

イノベーションの定義はまだまだ他にもありそうなのですが、今回は「アクティベーション型」イノベーションについて、考察を深めていきたいと思います。というのも、日々世界の広告賞などでそういった類のアイデアに出会うのですが、業界内に留めてしまうことに個人的にとても違和感を感じていました。だからいつまでたってもスケールしない、“未完のイノベーション”に止まっているものも多いと思います。微力ではありますが、少しでも多くの人に知ってもらう努力をする必要があるのではと。今回は、そんな勝手な使命感からこのコラムを書いています。

では、堅っ苦しい話はこの辺にして、世界から集めた選りすぐりの人をアクティベートするイノベーションの数々をご覧ください!

手洗いするとおもちゃが現れる、子どもたちの希望の石鹸

出典:D&AD

出典:WPP

2014年頃に南アフリカで生まれた、文字通り社会に希望をもたらす「Hoap Soap」。一見ただの石鹸に見えますが、これも人の行動を変える、小さいけれど大きなイノベーションです。コレラや肺炎など予防可能な病気によって命を落とす子どもたちを救うために、能動的な手洗い習慣を作る石鹸として考案されました。透明な石鹸の内側には小さなおもちゃが入っており、子ども達が喜んで手を洗うようになったそうです。手洗いが生活習慣上大切であることは知っていても、面倒くさくてついついサボってしまうのが人間共有のインサイト。そこで手洗いそのものに別の目的(=おもちゃが欲しい)を付与することで、行動を駆り立てようというのがこのアイデアのメカニズムです。

服を廃棄せずに、再び売ってもらうためのリセールタグ

出典:CONTAGIOUS

 

<

とある調べによると、購入された服は平均8回しか着られずに捨てられてしまうそうです。デンマークのファッションブランドSamsøe Samsøeは、まだ着られる服を捨てずに再び売ってもらうために、リセールタグを商品に取り付けました。首裏に印字されたQRコードをスキャンするだけで、Facebook AD上で広告を出すことができる仕組みです。誰もが使い古しの服をセカンドハンドアイテムとして気軽に売り繋ぐことができます。最近は、服のリサイクルボックスがお店に設置されてたりもしますが、そもそも持っていくのが面倒なのでそのまま廃棄してしまいがち。しかしこの仕組みがあれば、「お金ももらえるしやってみようか」と行動をアクティベートされそうです。

この記事はスタンダード会員限定コンテンツ(月額1,589円)です。
続きをご覧になりたい方は会員登録またはログインをお願いします。

この記事の残り文字数:2296文字

会員登録して続きを見るログインして続きを見る
お気に入りに登録

関連記事

社会を良くする“ピボット型イノベーション”

なんちゃって「パーパス経営」では意味がない!社会を良くする“共闘”イノベーション

日常から社会を変える、“普段着”のイノベーション

カンヌが評価した世界の “お節介”イノベーション